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恐怖と制裁

  あらゆる情動の中で、もっとも厄介な情動。それが恐怖です。恐怖は混乱をもたらし、冷静な判断を退けます。そして、恐怖は、さらなる幻想の恐怖、妄想を呼び寄せるのです。

 恵子の中に眠っていた「かわいい女性が彼のもとに現れたら、私は彼を失う。そんなことになったら、生きては行かれない」」という不安は、優香の登場で、ふつふつと表面に浮上しました。そして、その憶測を確信し、妥当性を検証することができなくなっていきました。

 恵子は、優香と同席しても、彼女を疎むあまりに、口をきこうとはしません。もしも、コミュニケーションを交わせば、自分の中の真実が、彼女の真実と違っていることを発見したことでしょう。

ですが、恵子はその恐怖を【彼】と共有し、そうすることによって、彼をコントロールすることを選びました。

 「こんなことが明るみに出れば、あなたは社会的体面を失うわ。」 

 

 


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  昇進を前にしていた【彼】は震えあがりました。昇進が台無しになる、いや、女癖の悪い男だという評判でも立ったら、周囲の人々の人望を失い、職を失うことになる!!一気にこうした前途を構想してしまったのです。

こうして、かつて、自分の方から声をかけ、悩みを打ち明け、自分たちの活動への参加を強く願ったその相手が、急に自分を滅ぼす危険な存在になってしまいました。「ありもしないスキャンダルを疑われれば、私の社会的体面にかかわる。今後君には××という制裁を取ることにした。わかったね。分かったら帰ってよし!!」

 

  ある日、言い放たれた彼の言葉に優香は唖然としたものです。【社会的体面】のためですか。パートナーをたいせつにしたいからではなく。

 「ちゃんと仕事をしている人間が、ありもしないスキャンダルのために職を解かれるとは考えにくいですが..」という、優香の言葉など、聞く耳を持ちません。今後優香との関わりを断つと、優香に向って断言します。関わりといっても、あまり個人的なものではありません。つまり、自分たちの会に来てくれても一切関わらないというのです。

   恵子は「あなたは正しいことをしたのよ。」と友人たちの前で、彼の行動を絶賛しました。彼もまた、そうした恵子の言葉に鼻の下をのばしてデレデレし、友人たちも大きくうなづくのでした。

正義の正体は、欲と恐怖です。恵子は彼への独占欲を満たすために、彼の恐怖心を煽り、成功を収めたのです。

【彼】は、パートナー以外の女性には見向きもしない清く正しい男であることを証明するかのように、以後一貫して優香には冷淡な態度をとり続けました。そしてその、自らの残酷さにふっと目が向くとき、さらに、分厚い正義の衣で武装するのです。

 困難な局面に直面すると、人格の深淵が表面化します。冷酷な正しさを行動の基準にする人の深淵には深い恐れがあります。人は怖れにとらわれている時、他者を愛せません。愛されていても、それさえ受け取れないのかもしれません。

 

 

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テーマ: 恋愛依存症? | ジャンル: 心と身体
カテゴリ: 共依存

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