Sponsored Link

抑うつと記憶障害

 深い悲しみが記憶力を鈍らせることが知られています。うつ病や心的外傷後ストレス障害が、脳の記憶中枢である海馬を萎縮させるのです。
 強い感情を伴う記憶は、情動脳である偏桃体を通して、長期記憶として貯蔵されます。その一方で、ストレスホルモンであるコルチゾールが過剰に分泌されます。海馬は、このコルチゾールによって、損傷を受けやすいのです。その結果、神経細胞が減少します。
 うつ病では、コルチゾールが慢性的に上昇しています。これはストレス環境下に長く居続けているか、あるいは、そこを離れても意識がその問題下に留まっているために、ストレス反応を解除できないでいるためと考えられます。
 過去の負の経験から「何をやってもダメ」といった過度の一般化が起きると、学習性無力感に陥っていきます。すると、意欲が起きず、コルチゾールのレベルも高いままです。
 コルチゾールの分泌が慢性的に多いと、インスリン(ブドウ糖をエネルギーに変えたり、貯蔵したりするホルモン)効果を押さえられ、その結果、疲労感、いらだち、キレやすさ、エネルギーの欠乏、意気消沈などとして現われます。

Sponsored Link

 極限のストレス下でへとへとに疲弊していると、「海馬から記憶があふれ出す」という現象が起きます。たとえば、毎日の通勤に使っている電車の車窓から、見慣れた風景を眺めていると、遠く過ぎ去った子供の頃の光景が鮮やかに甦ってきます。見慣れた風景、子供の頃の通学路、建物のいくつかは年月の経過によって入れ替わっています。にもかかわらず、あの日あのときの、子供の頃の出来事が、情感もありありと目に浮かぶのです。
 当時飼っていた猫がけんかした事、夏休みに川で掬った小魚をキッチンのシンクで飼おうとしたこと等など。通常なら、思い出そうとしても思い出せそうもないことばかりです。
 人は人生の終焉に、一生分の出来事を走馬灯のように思い出す等といわれるますが、疲弊の極限では、健常意識からは消え去っている記憶が、あふれ出して来るのです。
 こうした現象が起きるときには、全身も立つのがやっとというほどに、疲れ果てています。もうこれ以上は頑張れません。休息が必要です。
 記憶力の減退は、こうした極限状態が去った後に、自己評価の低下や、無力感を伴って、ゆっくりと訪れてきます。
 ですが、脳は可塑性のある臓器です。かつて成人の脳細胞は死滅することがあっても、再生することはないと考えられていましたが、今では新しい神経回路によって繋ぎかえられることが認められています。
スポンサーサイト
テーマ: 不安定な心 | ジャンル: 心と身体
カテゴリ: 脳と精神

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する