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うつ病と成育環境

 うつ病は、これまで「心の風邪」などと形容されてきました。風邪といえば、概ね「免疫が低下すると誰でも感染しうる一過性の感染症で、器質的な病変をきたすことは少ない」といった認識でしょうか。
うつ病も、なんらかのストレスが引き金となって、引き起こされたセロトニン(5-HT)やノルアドレナリン(NA)などの脳内モノアミン代謝障害と考えられてきました。
 ところが、近年の分子生物学的研究と、脳画像診断の進歩によって、モノアミン欠乏仮説の機能的異常ばかりでなく、器質的な変化が起きていることがわかってきました。従来の定説は覆されつつあります。
 各部位の体積測定による、海馬の委縮が報告されています。また、幼少期の心的外傷経験の有無を調べた研究では、心的外傷経験者には左側海馬委縮が報告され、うつ病発症への脆弱性と関係する可能性が問われています。成育期の環境は、予想外に長く、人の人生を支配することになるようです。

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 それでは不適切な環境下で成長した人々には救いはないのでしょうか。ひとつには、自分の脳の傾向を把握しておくことが大切だと思います。
 うつ病では、左前頭葉の機能低下が起きています。これは快を予測する部位です。逆に、右前頭前野、前部帯状回には過活動が起きています。こちらは不快を予測する部位です。
悲観的思考になる状態です。また5-HT 神経が関与していることから、長期的展望が持てません。短絡的に悲観的になります。
 そして、帯状回は一つの出来事から他の出来事へと関心を切り替える役割をしますから、不快な一つの出来事だけにいつまでもこだわり続け、他の事柄には上の空という状態になります。したがって、仕事が手に付かずミスが生じたり、他の人間関係に注意を払えないところから、一部の対人関係に支障をきたしてしまうこともあるかもしれません。
 
 成長期の心的外傷経験は、些細な刺激で過熱しやすく、ひとたび過熱が起きれば静まりにくい扁桃体を作るといわれます。こうした自分の脳の傾向を把握しておくことは、当然のことながら、かつての養育者の責任を追及するためではありません。
 かつてもらえなかった関係性を現在の人間関係に期待するあまりに、相手との関係性をこじらせるためでも、勿論ありません。
 自分という車の性能を知って、よりふさわしい道を、本来の利点を引き出しながら走るために、把握しておきたいものです。

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