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悲嘆と愛

 愛着の対象を失うと、人は無人島に独り取り残されたような寂寥感を味わいます。街中を歩いていても、まるで自分が下着姿のままでいるような感覚です。家に帰っても、待っていてくれた人はもういない。これからもいない。昨日まで居た人はもういない。
 行き交う人々は、別世界の住人達です。彼らは健康で、帰っていく家庭がある。彼らは、自分のような天涯孤独な身の上になることなど、一生涯ない。この世でたった一人、自分だけが不幸、そうした思いにとらわれます。「なぜ私だけが…」と怒りも覚えます。
 「死んだらどうなるのだろう」と、考え込むこともあります。元素レベルまで解体されて、別な物質を再構成するのだろうか、それとも、消滅してしまうのか。
 翻って、人生とは何なのかとも思いめぐらします。命が有限であることは、誰しも子供のころから知っています。それは前頭葉で理解しているのです。愛着の対象を失うと、それを大脳辺縁系の感性で感じ取ります。

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価値があるとされる何かを獲得するために、不本意に頑張ることが、虚しくなります。巨万の富を築いたところで、いずれ、たいしてありがたみも解らない誰かが、相続することになるのです。
 人生の時は、あっという間に過ぎていきます。好きでもないことに使うには短すぎます。
 寂寥感に見舞われるときは、過去の耐えがたく煩わしい人間関係を思い出してみます。たとえば、こちらの失敗や不幸を願いながら、心にもないお世辞を言うその言葉の端にも、棘がはみ出していたT子さん。もう関わらなくていいのは幸いです。
 同じように、悲嘆の海に沈む人がいたら、駆け寄って抱きしめたいと思います。あなたは一人じゃない、わたしがいる!けっして、あなたをひとりにはしないと。その人の冷えた手を温めるために、自分のぬくもりを使いたいと思います。それが、人生で一番大切なことだと思えるのです。もしかして、人は、深い痛みを知ることなしには、他者の痛みに共感できえないのかもしれません。
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カテゴリ: 抑うつ

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