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逆境と妄想

 妄想性人格障害の人は、現実見当識そのものが完璧に損なわれているわけではありません。ただ、他者の言動の背後に不穏なものを読み取ろうとする傾向が著しいのです。
 妄想性人格障害の診断基準は、根拠もなく、他人が自分に危害を加えたり、だまそうとするのではないかという疑いを持つ傾向です。友好的な人に対しても、その誠実さや親切の意図を探ろうとします。吹聴されるのではないかと恐れて、自己開示できません。侮辱されたり、軽蔑されたと感じると、過剰反応を示して激怒したり、トラウマとなって、いつまでも相手を恨みがちです。根拠もなく恋人や配偶者の、心変わりを疑います。
 こうした傾向は、逆境の中では、誰しも心当たりがあるものかもしれません。もちろん、信頼は大切です。ですが、疑った方がいい人物も存在します。その判断を、わたしたちの脳は、必ずしも正確に下せているとは言い切れません。

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人の脳は、特定の出来事から、自分の疑念や推理にふさわしい情報を探し求め、それを過度に重視するようにできています。雑多な登場人物が、交錯するドラマから、人は、自分を中心とした物語を勝手につくり上げるのです。
 例えば、電話がなかった。相手は他の用で多忙だったのかもしれないし、たまたま体調不良だったのかもしれません。ものぐさな性格かもしれません。にもかかわらず、仕事の割り当てを嫌がって逃げているに違いない、などと確信したりします。なぜなら、相手は嫌がっているに違いないと思い込んでいる自分がいるから。
 背景には、不安があります。逆境は、不安を生みます。太刀打ちしがたい相手の登場は、恐怖を生むことでしょう。太刀打ちしがたいが故に、憎悪も生まれます。乏しい自信の中に被害妄想は侵入します。そして、猜疑心の暴走が起きてしまいます。
 恐れ戦く人の脳は、過覚醒状態に陥っています。睡魔も近づけないほどに。現実を正しく認識するには、近づいて確かめなければなりませんが、恐れる相手、疎ましく思う相手に人は近づきたがりません。そこで、憶測が真実の顔をしてまかり通るのです。
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カテゴリ: 妄想性人格障害

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