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統合失調症の知覚障害

 知覚とは、感覚器官を通して、外界を捉える働きです。統合失調症では、この知覚にも異常をきたします。
 嗅覚の異常では、幻嗅が生じます。実際には何の匂いもしないのに、妙な匂いがすると感じます。被害妄想が基底にありますから、この部屋の空気はおかしい、毒を撒かれているという発想になります。被害妄想と幻嗅は、互いに強化し合っているのです。
 また、味覚にも異常を生じます。変な味がするという感覚異常が、食べ物に毒を盛られているという妄想に帰結します。
 非難したり命令する声が聞こえるという主訴も、よくあります。自らの思考の中で生じた内なる声を、他者の言葉として認識してしまうのです。
 こうした症状は、「前頭葉」の機能低下と「海馬、扁桃核と視床」など側頭葉、大脳辺縁系の機能亢進によると考えられています。

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前頭葉は、感覚器官から入ってきた情報を統合し、物事を判断し、理解する精神活動の中枢です。この部位の体積の減少が見られたり、血流が明らかに低下している状態では、判断力、現実見当識の障害が現れるのも不思議ではありません。
 さらに、側頭葉でも体積の減少が見られます。側頭葉には、聴覚、視覚、嗅覚、触覚といった知覚の他、記憶の中枢があります。異常な知覚を体感したり、幻聴が起こるのは、この部位の異常によるものです。
 また、側頭葉、大脳辺縁系は、感情回路と呼ばれています。この部位が過剰に興奮すると、大量の記憶が喚起されます。過去のいやな忌まわしい記憶が洪水のようにあふれ出すと、強い不安や怒り、恐怖感などに襲われます。
 誰しも、闘争や虐待などの過酷な環境下にいると、大脳辺縁系は過剰興奮をきたします。過去の同類の記憶が鮮烈に蘇ったり、逆に過ぎ去った幼少期の記憶が唐突に去来することもあるでしょう。目の前の危機をいっそう深刻に受け止め、食欲不振や睡眠障害といった身体症状も現れます。
 誰もが危機的状況下で経験する心理の延長線上、それが固定され引き返せなくなった状態だと考えると、理解しやすいかもしれません。
 今日、統合失調症の脳の状態は、その詳細が解明され続けています。ところが、そうなった原因はといえば、まだ靄の中という状態です。古くから遺伝説も有力ですが、一卵性双生児の発症一致率でさえ50%、発症に関与する遺伝子も多数存在するといわれています。単一遺伝子で発症するのではなく、関連する遺伝子が数十個集まれば発症にいたるという仮説もあります。
 他にも、妊娠中の母体のインフルエンザ感染、低体重出生など、危険因子がいくつか見つかっています。周産期の何らかの理由による、脳発達障害仮説が最も注目されています。
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カテゴリ: 脳と精神

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